看護師が病院以外へ転職する前に|NICUから保育園への体験談と職場選び

クリニック、在宅、保育園への道を前に働き方を考える看護師のイラスト
あお

病院の外に移ったら、今までの経験はどう生きるのでしょうか。今回は、NICUから複数の現場を経て保育園へ進んださやかさん(仮名)の体験談です。前半はさやかさんの経験、後半は職場選びの確認ポイントとして分けてお届けします。

ご本人の提供原稿をもとに、名前を変え、読みやすく編集しています。看護師歴20年という経歴は原稿提供時点のものです。前半はさやかさんの体験、後半は編集部による解説です。

目次

【体験談】NICUから保育園へ。働く場所が変わっても残った強み

NICUで身についた、小さな変化に気づく力

さやかさんが看護師として最初に働いたのは、NICU(新生児集中治療室)でした。赤ちゃんは、自分で症状を言葉にできません。バイタルだけでなく、表情や泣き方の違いにも目を向ける経験を通して、観察する力を身につけたと振り返っています。

緊張感のある現場で学んだ、いつもとの違いに気づくことは、その後に働く場所が変わっても、看護の土台になりました。

クリニック・検診センターを経て、内視鏡の専門分野へ

NICUを離れた後は、クリニックや検診センターで働き、予防や早期発見に関わる看護に触れました。それまでとは異なる場で患者さんと接し、看護の役割を広く捉えるようになったそうです。

転機になったのは、検診センターで経験した内視鏡検査の介助でした。不安を抱える患者さんへの声かけや、チームで検査を進める仕事に面白さを感じ、総合病院の内視鏡室へ進みました。職場を変える中で、さらに深めたい分野が見つかった経験です。

訪問看護から保育園へ。伝える力が支えになった

その後、ライフステージの変化を経て訪問看護に携わり、原稿提供時点では保育園で働いています。訪問看護では療養する人の生活に入り、保育園では子どもの体調管理や保護者への対応などに関わってきました。

どの現場でも役立ったと感じているのは、相手の立場を考え、分かりやすい言葉で伝え、話を聞く力です。患者さんや家族、医師、保育士など、関わる相手が変わるたびに、信頼関係を築いてきました。

一方で、多職種との連携には難しさもありました。保育士が中心の職場では、看護師の視点や判断の理由を説明する必要があり、役割の理解を得る難しさを感じる場面もあったそうです。

保育園で看護師の役割について保育士と話すイラスト

給与と体力の悩みは、転職後も残った

さやかさんの場合、訪問看護や保育園へ移ってから、病院勤務時より給与が下がりました。夜勤手当がなくなったことも一因として挙げています。ただし、具体的な給与額や勤務条件は示されておらず、この体験だけで職場ごとの給与水準を比較することはできません。

また、経験を重ねる中で体力面の変化も感じています。今後は後進の育成や相談業務など、経験を活かしながら無理なく続ける道も考えているそうです。やりがいが見つかったことと、働き方の悩みがなくなったことは、同じではありませんでした。

【編集部の解説】病院以外の職場は「施設名」より実際の仕事で比べる

ここからは、提供原稿に公的機関などの情報を補い、編集部が職場選びの確認点を整理します。

看護師の活躍の場は病院や診療所に限らず、訪問看護ステーション、介護・福祉施設、企業、学校などにも広がっています。ここでは、体験談に登場した職場を中心に考えます。日本看護協会「看護職とは」

クリニック、健診・検査部門、訪問看護、保育園を同じ確認項目で比較するイメージ
職場名だけで決めず、仕事内容・勤務時間・相談体制を同じ項目で確認します。

下の表は、職場の優劣や「楽さ」を示すものではありません。求人を比べるときに、仕事内容と自分の希望が合うか確かめるための質問例です。

職場・部門 仕事内容で確認すること 働き方・支援体制で確認すること
クリニック 診療科、外来業務の範囲、検査介助の有無 診療終了後の業務、土曜勤務、休憩の取り方
健診・検診センター、内視鏡部門 配属先、担当する検査、介助経験の要否 早出、繁忙期の勤務、内視鏡部門の緊急対応や教育体制
訪問看護 訪問先、対象となる利用者、移動手段、記録業務 オンコール、同行訪問、単独訪問中の相談先、欠勤時の代替
保育園・保育所 保健業務と保育補助の範囲、医療的ケアの有無 看護職の配置、園長・保育士との役割分担、不在時の対応

※内視鏡部門は病院内にもあります。「病院以外」だけに絞らず、今の職場での異動や勤務形態の相談も比較対象にしてみてください。

【編集部の解説】転職前に確かめたい3つのポイント

1.給与は月給の大きさではなく、内訳と年間の見込みで確認する

夜勤を減らしたいときは、現在の給与明細で、基本給と夜勤・時間外などの手当を分けてみましょう。転職先の提示額も同じ項目に分けると、何が増え、何が減るのかを整理できます。

編集部としては、次の項目を採用担当者に確認することをおすすめします。

  • 提示月給に含まれる手当と、その支給条件
  • 固定残業代がある場合の金額・対象時間
  • 賞与の算定方法と初年度の扱い
  • オンコールの待機・出動に対する手当
  • 試用期間中の条件、昇給・退職金制度の有無

賞与や変動する手当は、見込額と確定している条件を分けて考えます。求人票の月給と、今の手取り額をそのまま比較しないことも大切です。

厚生労働省は、仕事探しでは求人票・募集要項、契約を結ぶ際には労働条件通知書などで条件を確認するよう案内しています。口頭の説明で不明点が残ったら、契約前に書面などで確認しましょう。厚生労働省「労働条件の明示」

2.「夜勤なし」と、勤務時間外の対応がないことを分けて考える

日中の勤務を希望していても、オンコールや緊急時の対応が自分の生活に合うかは別に確認したい点です。日本看護協会の訪問看護の紹介資料にも、夜間・休日に交代でオンコールを担当する事例が掲載されています。すべての事業所や求人が同じ条件という意味ではありません。日本看護協会「訪問看護ステーションで働きませんか?」(PDF)

面接では、有無だけでなく「月の担当回数」「電話対応と出動の頻度」「困った際に相談できる相手」「担当開始までの教育」を聞いてみましょう。頻度は直近の実績と、自分の雇用条件で分けて確認すると具体的になります。

体力面が気になる場合も、職場名だけで判断せず、移動・立ち仕事・休憩・記録時間など、一日の流れを確認することをおすすめします。

3.保育園では、看護師の役割と相談先を確認する

保育園を検討するときは、子どもと関わる仕事への関心に加え、健康・安全を職員全体で支える体制に目を向けましょう。こども家庭庁が掲載する保育所保育指針解説では、子どもの健康と安全について、施設長の責務の下で全職員が共通認識を持つことが示されています。保育所保育指針解説・第3章「健康及び安全」(PDF)

見学や面接では、体調不良時の連絡・判断の流れ、保護者対応の分担、看護師が休む日の体制を聞いてみてください。保健業務と保育補助の範囲、医療的ケアを担当する場合の支援体制も確認したい点です。

さやかさんが感じた連携の難しさを、「保育園は看護師を理解してくれない」という一般論にするのではなく、自分が応募する園の体制を確かめる手がかりにしましょう。

【編集部の解説】応募前に「譲れない条件」を3つに絞る

候補を探す前に、次の3項目をメモしてみてください。

  1. 続けたい仕事:専門分野、患者さんや子どもとの関わり、教育など。
  2. 変えたい負担:夜勤の回数、通勤時間、勤務時間外の対応など。
  3. 守りたい条件:必要な収入、退勤時刻、休日、相談できる環境など。

たとえば「日勤で働きたい」を、「何時までに退勤したいか」「土曜勤務やオンコールは可能か」まで具体化します。すべてが同じ優先度ではないはずです。譲れない条件を3つ決め、その他は相談できる条件として分けると、求人を比較しやすくなります。

応募先には、入職直後の配属だけでなく、将来の業務・勤務地の変更範囲も確認しましょう。2024年4月から、募集時に明示する事項には業務・就業場所の変更範囲などが追加されています。厚生労働省「募集時等に明示すべき事項」

【編集部の解説】病院以外への転職でよくある疑問

病院を離れると、これまでの看護経験は活かせなくなりますか?

さやかさんは、NICUで養った観察力や、相手に合わせて伝える力が、その後の現場でも役立ったと振り返っています。ただし、経験があることと、新しい業務をすぐ一人で担当できることは別です。応募先で必要な知識・技術を確認し、入職時の研修や相談体制まで聞いておきましょう。

転職するか決めていない段階でも、相談先はありますか?

都道府県ナースセンターでは、看護職の就業相談や無料職業紹介、再就業支援研修などを行っています。まずは希望条件や迷っている点を整理し、地域の窓口に相談方法を確認する選択肢があります。オンラインで求人検索などができる「eナースセンター」も案内されています。日本看護協会「ナースセンターとは」

あおから:経験を生かすために、職場の体制も確かめる

さやかさんは、働く場所を変える中で新たな専門分野ややりがいに出会う一方、給与・体力・多職種との連携に悩んできました。病院以外に移れば、すべての悩みが解消するとは限りません。

まずは「続けたいこと」「変えたいこと」「守りたい条件」を書き出し、気になる求人の仕事内容・勤務・収入・支援体制と照らし合わせてみてください。転職だけでなく、今の職場で働き方を相談することも含めて、次の一歩を考えていきましょう。

求人票・見学・内定時の確認事項を、職場選びチェックリストで読む。

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