働く場所を変えることは、これまでの経験を手放すことなのでしょうか。今回は、病棟・ICU・保育園・美容の現場を経て、カテーテル室で働くかおりさん(仮名)の体験談です。別々に見えた経験がどうつながったのかを紹介します。
ご本人の提供原稿をもとに、名前を変え、読みやすく編集しています。看護師歴15年という経歴や担当業務は、原稿提供時点のものです。以下はかおりさん自身の経験です。
働きながら学び、病棟からICUへ
かおりさんは、准看護師として病院で働きながら学校に通い、看護師の資格を取得しました。准看護師時代には、亜急性期から緩和ケアまで、さまざまな状況の患者さんに関わっています。
その後に配属されたICUでは、毎日必死だったと振り返ります。アラームが鳴るたびに緊張し、指導を受けながら記録を書く日々。それでも、患者さんの様子を丁寧に見て、小さな変化に目を向ける姿勢が身についたと感じています。
病棟で経験した、患者さんの暮らしや思いを支える看護も、本人の中に残りました。忙しい現場で対応する力と、一人ひとりに向き合う姿勢が、その後の働き方の土台になっていきました。
保育園では、これまでとは違う力を育てた
結婚後、保育園の看護師として働くことを選びました。医療の現場から離れることには迷いもあり、それまで積んできた経験をどう生かせるのか、気になったそうです。
実際に働く中では、子どもの小さな体調の変化に目を向けることや、保護者の不安に寄り添って話を聞くことが大切になりました。
本人にとって保育園は、病院で得た経験を手放す場所ではなく、それまでとは違う経験を重ねる場所になりました。そこで育ったコミュニケーションの力も、その後の自分につながっていると受け止めています。
美容の現場で感じた、求められる役割の違い
次に経験したのは、美容看護の現場です。同じ看護師でも、職場によって期待される力や評価のされ方が違うことを、強く感じました。
その職場では、接客やカウンセリングの力が重視され、これまでの医療知識だけでは対応しきれないと感じる場面があったといいます。
この経験は、美容看護の現場すべてを説明するものではありません。かおりさん自身が新しい場所で感じた戸惑いであり、看護師としての自分の価値や、職場で求められる力を考え直す経験になりました。
カテーテル室で、別々の経験がつながった
原稿提供時点で働いていたのは、カテーテル室専属の現場です。本人は、ICUで培った観察の姿勢、病棟で身につけた対応力、子育ての中で育った柔軟さが、今の仕事につながっていると感じていました。
経歴だけを並べると、領域を何度も変えてきたようにも見えます。しかし本人にとっては、それぞれの現場で得たものが、後になって生きているという実感がありました。
初めからすべてを計画していたわけではありません。その時々の環境や立場に悩みながら選んだ経験を、今の自分の土台として捉え直していました。

暮らしも学びも大切にしたい、という本音
原稿には、仕事の責任に対して待遇が見合っているのか、という迷いも書かれていました。経験年数だけでなく、実際に担っている仕事や力を見て評価してほしい、という思いがあったそうです。
子育てをしながら働く中では、子どもの体調に合わせた休みも、仕事のための学びも大切にしたいと感じていました。その両方を希望しにくいと感じる場面があり、家庭と仕事のどちらかを我慢し続けることに疑問を持っていました。
ここで語られているのは本人の経験であり、子育て中の看護師の働き方や、どの職場の評価制度も同じだという意味ではありません。本人が働く場所を選ぶうえで、何を大切にしたいかが見えてきた部分です。
あおから:次の職場で、何を生かして何を学びたいか
この体験から考えたいのは、経験した職場の数の多さではなく、それぞれで得たものと、今の暮らしに必要な条件です。
職場を比較するときは、次のような点を整理してみてもよさそうです。以下はかおりさんの発言ではなく、編集部による質問例です。
- これまでの経験のうち、次の職場で生かせそうなことは何か。
- 新しく学ぶ必要があることに対して、教育や相談の仕組みはあるか。
- 採用後に期待される役割や、評価される仕事は何か。
- 家庭の事情で勤務調整が必要なとき、誰に相談し、どう調整するのか。
- 研修や勉強会への参加を、勤務時間や生活の中にどう組み込めるか。
かおりさんは、合わないと感じたときに、別の場所を考える選択肢があることを支えにしていました。転職すれば必ず解決するという話ではありませんが、過去の経験を振り返りながら、これからの働き方を考える一つの実例です。
経験を生かす仕事と勤務条件を、職場選びチェックリストで整理する。
働く場所そのものを比べたいときは、病院以外の職場を選ぶときの確認点も参考にしてください。
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