憧れた救命の現場で経験を積んでも、休憩や待遇への悩みは別に残ることがあります。今回は、病棟から救命救急・ERへ進んだなつきさん(仮名)の体験談です。挑戦したい仕事と、続けるための条件を一緒に考えます。
ご本人の提供原稿をもとに、名前を変え、読みやすく編集しています。看護師歴14年という経歴や担当業務は、原稿提供時点のものです。以下はなつきさん自身の経験です。
心臓血管外科・循環器の病棟でつくった土台
看護師としての出発点は、心臓血管外科・循環器内科の病棟でした。術後の患者さんへの対応や観察、急変時の動きなど、覚えることが多く、勉強と実践を重ねる日々だったといいます。
複数の業務を同時に進めることに慣れず、同期との差や先輩の言葉に落ち込むこともありました。その中で仕事を続ける支えになったのは、患者さんが回復していく姿を見られることでした。
異動先で広がった、一人の人と向き合う視点
その後、整形外科・神経内科の病棟へ異動。リハビリや退院支援、長く療養を続ける方への看護を経験しました。
それまで身につけた知識や技術を生かしながらも、以前と同じ見方だけでは足りないと感じたそうです。目の前の方にとって何が大切なのかを考える経験が、病気だけでなく、その人自身と向き合う姿勢につながりました。
救命への転職で、経験者として学び直す
一般病棟で経験を積んだ後、憧れていた救命救急センターへ転職しました。転職後は重症患者さんへの看護を学び、さらにERへ異動しています。
経験のある看護師として移ったからといって、最初からすべてに対応できたわけではありません。これまでの経験を土台に、新しい現場で学び直す時間がありました。

やがて、慌ただしい場面でも周囲と役割を共有し、全体を見ながら行動できたときに、自分の成長を感じるようになりました。原稿提供時点では、リーダー業務も担当しています。
一方で、患者さんの受け入れが重なると休憩を取りにくいこともあり、身体的にも気持ちの面でも負担を感じていました。仕事への手応えと、日々の大変さの両方がある現場だったと振り返っています。
災害医療への関心が、次の目標になった
災害医療に携わるDMATの活動を知ったのは、救命分野へ転職する前でした。被災地の支援に関わりたいと思い、隊員として学ぶ中で、救急や集中治療の経験を持つ周囲との違いを感じたといいます。
もっと経験を積みたいという気持ちが、救命救急センターへの転職を考えるきっかけの一つになりました。転職後も研修や訓練を重ね、災害派遣を経験しています。
病院とは異なる環境で活動することへの緊張や不安はありました。それでも、現地で感謝を伝えてもらえたことが心に残っているそうです。原稿提供時点では、新しい隊員への指導にも関わりながら、次の目標に向けて学び続けていました。
責任が増えても、待遇への不安は残った
急変対応、夜勤、リーダー業務、後輩指導。担う役割が増える一方で、本人は給与の変化を十分には感じられず、責任と待遇の釣り合いに悩んでいました。
これはなつきさんが自身の職場で感じたことで、救命の仕事全体の給与水準や昇給を示すものではありません。ただ、仕事のやりがいが大きくても、生活や将来への心配は別に存在するという点が、この体験には表れています。
看護師を辞めようかと考えた時期もありました。それでも、患者さんの状態がよくなったときや、ご家族から感謝を伝えられたときの実感が、続ける理由になっていました。
あおから:挑戦したい仕事と、続けられる条件を分けて考える
なつきさんにとって、異動や転職は新しい学びや目標につながりました。同時に、仕事内容に満足できても、負担や待遇の悩みがすべて解消したわけではありません。
以下は体験談を踏まえて編集部が整理した、職場を比較するときの質問例です。

- 経験者として入職しても、新しい領域を学ぶ時間や相談相手はあるか。
- 夜勤やリーダー業務、後輩指導など、実際に担う役割はどこまでか。
- 忙しい勤務中の休憩や、負担が重なったときの応援はどう調整しているか。
- 役割の変化と評価・手当について、どのような説明があるか。
- 研修や院外活動への参加を、勤務や暮らしとどう両立できそうか。
転職するかどうかを急いで決める前に、挑戦したいことと、無理なく働くために必要な条件を別々に書き出してみる。今回の体験は、その両方を考えるきっかけになります。
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